民俗芸能調査クラブ2014

民俗芸能調査クラブは、ダンサー、演出家、俳優、音楽家などのアーティストが、民俗芸能をリサーチし、自身の活動に結びつけるためのプロジェクトです

中間発表実験 萩原

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実験の方法
 

1 実験参加者を3人決定して、その方々を外に出しておく。


2 参加者が外に出ている間に、洋服を散らばす


3 3人に部屋の中に入ってきてもらう。服を見ながら、この服の持ち主について、3人で想像してもらう。
「女性」「雑な性格」「化粧はあまりしないはず」


4 この人についての質問をこちらから出し、相談しながら答えてもらう


「この人の好きな動物は?」「ハムスター」


「この人が他人よりも得意なことは?」「リリアン」


「この人の故郷は?」「北関東で畑があるところ」


5 次に、この人が、「死んでいる」という情報を出す。死んで、幽霊になったこの人がいまここにいるので、喜ばせてあげてください。

 

すると、以下の様な行動が見えてきた……
・服を畳む
・コーディネートする
・お菓子をあげる
・カップ麺をあげる
・椅子を用意する
など。


6最後に、この人が、お返しをするので、5分間見ててあげてください(ただし、生きている次元が違うので見えません)


7 5分たったら終わり(ここで本当は偶然に何か起こらないかな(なんかしているんじゃないかと錯覚できないか)と期待したんだけど何も起こらなかった)

 

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実験の概要

 

 川(川筋・水系)と芸能の関係について考えていて、全然イメージが沸かなかったんだけど、川を「メディア」として考えると、いろいろと派生して見えてきた。
 元々の仮説は「同じ水系に住む」=「似た体になる」ということだったんだけど、それは、もしかしたら川を流れるいろんなものだったり、たまにやってくる人だったり、一部分の情報が集積されてなっていくのではないか、とか何とか色々考えていたら、「痕跡」という単語が見えてきた。


全体、あるいは実在ではなく「痕跡」=部分から何かを浮かび上がらせる(=メディア)とはどういうことか、ということに主眼をおいている。


例えば、上記の実験が「男の服」を用いていれば、その喜ばせ方はずいぶん違ったものになるだろうし、例えば、供えるものも変わってくるだろう。もしも、強引に「この人のために動いてください」という指示を出したとしたら、それもずいぶんかわるはず。


「痕跡」から、異なる喜ばせ方が生まれる。この喜ばせ方は「祭り」と言い換えられるものだ。


おそらく、神を直接見たという人は、誰もいないはず。でも、何かしら「神聖」のようなものを感じることはあるだろう。噴火や津波などの自然現象だったり、あるいは木を揺らす風かも知れないし、神がかりになった人かもしれない。これは、その地域に与えられた自然の条件によって全く異なる。この異なった「痕跡」から、さまざまな「神」が導き出され、そしてさまざまな「祭り」が生まれたんじゃないだろうかと考える。


 例えば、多摩地区には数多くの特徴を持った獅子舞があるが、なぜこのようなバリエーションを生み出していったのだろうか? それは、村によって描く「神」の性質が違った=つまり、「痕跡」が違ったからなんじゃないか。


 今日は、特に反応はなかったけど、「お返し」の時間に、偶然何かの「反応」があれば、自分たちの喜ばせ方を認めることができ、反復の可能性が生まれるんじゃないかしら。

 

課題


・今回は、どこかよそよそしいというか他人行儀というかな関係性に終わった。けど、祭りにおける神との関係は、そんなに遠くない「俺達の神」みたいな。その個別性がもっと生まれるなら、喜ばせ方も、もっと個別的なものになったはず。


・今回の実験では、「服」を痕跡として扱ったけど、「痕跡」になるものは無数にある。それが、どのように「痕跡」として見いだされるのか、が気になる。


・実験者には、「痕跡」の性質を特定の傾向にひきつけて見出したい欲望はないのかしら? ロールシャッハ・テスト的な感じで。