民俗芸能調査クラブ2014

民俗芸能調査クラブは、ダンサー、演出家、俳優、音楽家などのアーティストが、民俗芸能をリサーチし、自身の活動に結びつけるためのプロジェクトです

温座秘法陀羅尼会 亡者送り はぎわら


浅草寺の温座秘法陀羅尼会・亡者送り Damon Festival in Asakusa Senso-ji temple - YouTube

浅草寺 温座秘法陀羅尼会 はぎわら
1月18日 東京都台東区浅草

浅草・浅草寺で「温座秘法陀羅尼会」という儀式が行われるということで、行ってきた。

 

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1月12日〜18日までの7日間、僧侶が交代して昼夜を問わず「観音秘密供養法」という呪文を唱える。この儀式は名前の通り非公開で行われるものの、最終日となる18日の午後5時より一般の信徒に公開、さらに午後6時から松明をもった鬼が境内に登場し、松明を地面に打ち付けていく「亡者送り」という儀式が行われる。17時30分頃に到着すると、境内には既に人だかりができていた。本堂の奥では儀式が行われているが、残念ながら人の壁で近づくことができず、遠巻きから眺めるのみ。気になる……。

そして、6時になり境内の電気が消されると、あたかもコンサートのように「おおー」という歓声が響く。そして、竹でできた松明を持った鬼が登場。一斉にフラッシュが焚かれ、さながらプロレスラーの入場のような雰囲気だ。

本堂の階段を降りると、鬼たちは、常香炉(煙を浴びるあれ)の周りを3回ぐるぐる回る。さらに、山門の柱を周り、と次々に移動をしていく。その間に、地面を松明で打ち付けるのだ。松明を打ち付けて残った火の粉に人々が群がって、その燃えカスを拾っていたのだが、これは火除や魔除けのご利益があるという。そんな燃えカスに群がる人々を尻目に、ずんずんと鬼たちは歩みを進めていく。もうちょっとゆっくり歩いてもいいんじゃないかと思う。先導をする神社の人に「もう少しゆっくり歩きましょう」と言われていたから、鬼は年季が入っていない人なのかもしれない。いったい、どういう人が鬼役をやっているんだろう? 

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そして、境内にある銭塚に移動した鬼たち。松明を穴の中に埋め、災厄を封じ込めるのだが、しばしの写真撮影タイム。「次こっち」の声に鬼たちが向きを変える様は、果たしてこいつらは本当に鬼なのだろうか? と疑問を挟みたくなるが、フォトタイムが終わると、2人の鬼は松明を穴の中に置いて去っていった。

と、わずか15分ばかりの短い儀式だった。

何だか、訳もわからず鬼について歩き回っていたのはとても楽しかったけど、「諸尊への祈願とともに施餓鬼(せがき)作法により悪霊も鎮められ、年頭の除災招福の祈願が達成されるのです」と、ホームページに紹介されているような感覚は共有できず。それよりも、鬼が松明を置いて去った後、おじさんが穴を埋める手つきが、なんというか、農家の手つきみたいでとてもよかった。つまり、やるべきことを淡々とやっているという手つきが僕は好きなのだ。

柵越しに「災厄を埋めてるんですか?」と聞いたら、「そうだよ」と当然の如く答えていた。