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民俗芸能調査クラブ2014

民俗芸能調査クラブは、ダンサー、演出家、俳優、音楽家などのアーティストが、民俗芸能をリサーチし、自身の活動に結びつけるためのプロジェクトです

江古田の獅子舞 萩原

 


江古田の獅子舞 Lion Dance in Hikawa Shrine 中野区無形民俗文化財 - YouTube

2014年10月5日

東京都中野区江古田氷川神社

 

 演劇人が数多く住んでいる町だから、稽古や打ち合わせなどでさんざん江古田には足を運んでいる。けれども、まさかそんな江古田に三匹獅子舞が残っているなんて思ってもみなかった。新江古田駅から徒歩10分の江古田氷川神社では、毎年10月の第一日曜日に獅子舞が奉納されている。

 台風が近づき、都心にも大雨が降り注ぐ中、2014年の江古田の獅子舞は神社の舞楽殿から社務所に場所を変えて決行された。

 

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 この獅子舞の歴史は鎌倉時代から、およそ800年と言われている。神社の発行するパンフレットによれば「金峯権現の行者から普門品の経旨にのっとり、悪魔を降伏し災難を消除して氏子の幸福を祈祷するために伝授された」ということ。また「昔悪疫が流行した時、村内各戸を巡り病魔を退治したことがしばしばあって『祈祷獅子』と称されている」ということ。どうやら、修験道を起源に持つ霊験あらたかな獅子舞らしい。

 本来であれば、豪勢な山車の出る「道行」からはじめなければならないが、大雨のためこのイベントは中止されたらしい。2時から、社務所で「笹の舞」からスタートする。

 現在、江古田の獅子舞は7幕構成で行われている。途中休憩をはさみつつ、上演は14時〜22時半にまでおよんでいる。だが、これでも短縮されている。かつては、12幕が舞われていたのを7幕に構成を変更しているのだ。「昔はみんな農家だったから、これしか楽しみがなかったんだよね」と氏子の一人。

 女獅子、中獅子、大獅子(タイジシと呼んでいた)の3匹と、4人の花笠が登場し獅子舞はスタート。社務所の中は、入りきれないほど数多くの人でにぎわっている。まず、女獅子の「四方固め」からスタート。そして、中獅子と大獅子の「舞出し」が舞われ、いよいよ笹の舞に入る。

 解説の人の話を少し聞き漏らしながらなので定かではないが、この笹を悪魔と見立てて退治をするという。だが、これを舞う大獅子は、なんと悪魔の力で眠くなってしまった……。うつらうつらする大獅子。首が左右に振れ、「あ、いかんいかん」と起きだすも、再び眠りの世界に……というのを繰り返す。この演技、どことなく「志村後ろ〜」に似ていなくもない。そして、眠くなる魔法を振り払った大獅子は、悪魔の笹を一飲みしてしまった! 無事悪魔を退治した大獅子は、中獅子、女獅子と一緒に喜びの舞を舞う。

 女獅子は小中学生、中獅子は高校生〜大学生、大獅子は大人が舞う。いずれも男の人の舞だ。この舞の特徴として、「格式の高さ」を上げている。江古田に現存する東福寺は、元々将軍が鷹狩に行く際の休憩所であったらしく、三代将軍家光も鷹狩の際に江古田の獅子舞を見ている。とは言え、しずしずとした踊りというわけではなく、農民たちの勇壮さが全面に出た踊りといえるだろう。他の獅子舞と比較しても、とにかく上手い。この祭りのために25日間練習を積んでおり、さらに、10年選手、20年選手の舞手もゴロゴロといる。沈み込む足腰の強さに、積み重ねてきた練習量がにじみ出る。

 また、特徴として、リンボーダンスのように背中を反らせる動きがある。「何を意味しているのかはよくわからない」(氏子)ということだが、この仕草が入ると観客たちは拍手を送る。こんな動き、他の獅子舞では見たことないけど、昔からの動きなんだろうか? と思い聞いてみると、「以前は、背中を反らす踊りと反らさない踊りがあったのだが、観客のうけがいいため、今ではほとんど全部の演目で背中を反らせるようになってしまった」ということ。どうやら、ウケ狙いという意味合いが強いようだ。

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 さて、第二幕は「帯の舞」。

 どんなものかと思いきや、今度は花笠はおらず、3匹獅子だけの登場。しかし、「四方固め」「舞出し」は変わらない。そして悪魔の力で大獅子が眠そうに……というところまで同じ。簡単に書いているが、ここまで40〜50分くらいあるのだ。そして、今度は笹ではなく、帯を一飲みしてしまった大獅子。そして、イエーイ!と言わんばかりに3匹で喜びの舞。舞手は違えども、その構成はほとんど1幕と同じ。

 第三幕は平舞。これも、「四方固め」、「舞出し」、「眠くなる大獅子」まで同じで、目を覚ました大獅子は何も飲み込まずに舞う。そして喜びの舞。いい加減、飽きてきたな……と思っていると、4幕は違った。喜びの舞からスタートし、今度は、女獅子を取り合って、中獅子と大獅子がケンカ。取り合いのうちに、女獅子は牡丹畑に隠れてしまう。一緒に協力して女獅子を探す2匹。ようやく発見の末、仲直りする……。いわゆる「女獅子隠し」のシーンで、江古田の他に、水止舞や小宮神社の獅子舞などでもこの演目は披露されていた。

 ここで、食事のための休憩を行い、後半には3幕。しかし、所用があるため、今日はここまでとなった。

 「東京には地域コミュニティが存在しない」とすぐに言ってしまいがちだけど、全然そんなことはない。江古田の獅子舞では、「あそこの○○くんが」とか「○○頑張れ」といった声が飛び交う。獅子舞があるから地域コミュニティが残されているのか、それとも別に関係ないことなのかは定かではないが、「地域コミュニティ」なるものは確かに存在していた。

 もしかしたら、東京にも結構多くの地域でコミュニティは残されているんじゃないか?

 ただし、僕らのように、移住してきた若い人とは生きているレイヤーが異なるのでそのコミュニティは見えにくい(務め人やサービス業者のレイヤーではない)。見えにくいから、あたかもないように錯覚してしまう。けれども、もしも子どもが生まれたり、あるいは、地元の流行らない飲み屋にでも足を運んでみたら、きっとそういうコミュニティはあるのだろう。僕らは勝手にそれをなきものにしているんじゃないか。そして、自分に取って地域コミュニティが「存在しない」と嘆いているんじゃないか。

 一ヶ月くらい電車に乗らずに、家の周りだけで全てを完結させたら、もしかしたら地域コミュニティなるものは見えてくるかもしれないけど、僕はそんな生活は嫌なので遠慮する。