民俗芸能調査クラブ2014

民俗芸能調査クラブは、ダンサー、演出家、俳優、音楽家などのアーティストが、民俗芸能をリサーチし、自身の活動に結びつけるためのプロジェクトです

田遊び@徳丸北野神社(板橋区) 清水

訪問日:2月11日(祝・水)18:00~20:00

 壁のように聳える団地で有名な高島平は、古くは徳丸ヶ原と呼ばれ、荒川の南に広がる穀倉地帯だったそうだ。今ではその面影を探すのは難しいが、1974年の航空写真(wiki掲載)では、団地の周りに畑か田圃が広がっているのが確認できる。その高島平駅周辺の平坦な土地から南へ、坂を上った先に徳丸北野神社がある。創建1020年といわれ、995年から現在の田遊びに繋がる神事が、毎年旧暦の正月11日に欠かさず行われてきたという。

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温座秘法陀羅尼会 亡者送り はぎわら


浅草寺の温座秘法陀羅尼会・亡者送り Damon Festival in Asakusa Senso-ji temple - YouTube

浅草寺 温座秘法陀羅尼会 はぎわら
1月18日 東京都台東区浅草

浅草・浅草寺で「温座秘法陀羅尼会」という儀式が行われるということで、行ってきた。

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浅草寺 温座秘法陀羅尼会 清水

 浅草寺HPによれば、江戸中期から始まり、1月12日の「開白」~18日の「結願」まで「観音秘密供養法」を168座、24時間行うもの。座が冷えることがないため温座と呼ばれるそうだ。観音の慈悲を表す陀羅尼文が唱えられることから、陀羅尼会の名がついたという。本堂内部の東側一角に設けられた一室に五色の幕を下ろし結界して行われ、18日最後の座である「結願」では信徒向けに五色幕が引き上げられる。

 17時過ぎに本堂前に着くと既に幕は引き上げられ、室内には住職や信徒らが勢ぞろいしていた。入りきらない信徒や偶々立ち会った観光客らが一室を取り巻くように立って、中の様子を窺ったり手を合わせて小声でお経を唱えたりしている。取り巻きの頭越しにしか内部が見えなかったためどんなことをしていたのかはわからないし、喧騒で外まで声は聞こえない。室の入り口付近に立つと漸く住職全員の読経が聞こえてきた。

 聞き始めでは低くゆったりした音で唱えられており、宗派にもよるがお葬式で聞く声に近い印象。途中転調し、少し明るめの音になった。おそらく唱えるお経が変わったんじゃないだろうか。それが一旦静まると、貫主によって「結願」の言葉らしきものが唱えられ、供えてあったらしい物たちを下げ始めた。あらかた下げ終わったのだろうか、最後の読経が始まる。テンポが速く、音の振幅は大きくないがまるでラップのようにも聞こえる。時折「観世音菩薩」とか「空」とかが聞き取れる。住職たちは基本的に座っているのだけれど、身体は固まっていないというか、それまでの読経の状態と比較すると躍動感を感じた。ざっくりいえば、盛り上がっている感じがしたのだ。長く息を吐きながら読むことで、おそらく副交感神経が優位になり内臓が活発になっているのだろうけれど、それゆえに座っている状態でも盛り上がっている印象を受けたのだろうか。

 テンポの速い読経の最後の部分で声が少し引き伸ばされ音も少し低くなり、「納めた」或いは「結んだ」感じになった瞬間、引き幕が下ろされ、照明が消され、松明を持った二人の鬼が本堂の奥から登場する。これまで見た神事の中では一番演出的にかっこいい。

鬼は竹でできた松明で地面を叩きながら香炉や山門の下をぐるりと回っていく。信徒や観光客は松明から落ちた炭を競って拾っていく。ご利益を期待してのようだが、寺側は特にその意図は押していないようなので、おそらくいつの頃からか誰かが拾い始めたのだろう。まだ燃えていて熱いので、鉄の入れものや箸を持参している人もいた。山門の下をぐるっと回っているときなど、「3回まわるまで入らないでー」と法被姿の男性たちから声が飛んでいた。

 最後に鬼は境内外れの銭塚地蔵堂の前に掘られた穴に火を捻じ込む。火が完全に消えたところで終了、鬼は帰っていく。残された穴は法被のおじいさんによって丁寧に埋められ均されていた。鬼が登場してから穴に松明が投入されるまで30分もないような短い時間だったが、個人的なハイライトは引き幕が降ろされる時と、この穴が埋められる時である。

 浅草寺の説明文によれば、7日間24時間の読経が行われている室の脇で、「曠野に棲むとされる魑魅魍魎や餓鬼」に対する供物への加持が行われていて、それを事前に件の穴に埋めてあるらしい。鬼は松明によって道中で災厄を浄化し、その火を穴に投入することで悪霊も鎮めるということだそうだ。二体の鬼は頭に白い頭巾を被って弁慶のような格好をしており、顔は白塗りに一方は赤、もう一方は青の隈取を施している。頭巾の上に巻いた縄のようなものが飛び出していてそれが角のように見える。鬼と呼ばれているけど、僧兵の姿が原型と思われる。恰幅がよく足取りは悠々としていて、格好は派手だが恐ろしい異形のものといった印象ではなかった。

 鬼が穴に向かうまで境内の明かりは松明のみになるのだが、もはや現代の東京だと周辺の店舗やビルの明かりが煌々としているので、暗闇にはならない。これが松明の火以外真っ暗であったら、また受け取る感覚や雰囲気はちがうのだろう。恐さや妖しさが増され、それによって松明の火やそれを捻じ込んだ穴を埋める行為の、何某かの説得力がより強くなったのではなかろうか。

熱田神宮の歩射神事 はぎわら


熱田神宮の歩射神事(途中まで) Bowing Festival in Atsuta Shrine - YouTube

 

1月15日

愛知県名古屋市熱田区 熱田神宮

 名古屋駅から名鉄で10分程度、名古屋の人なら一度は行ったことがあるような、東京でいうところの明治神宮のような神社が熱田神宮だ。2月に僕の作品が愛知芸術劇場で上演されるのでhttp://www.aac.pref.aichi.jp/syusai/publicimagelimited/index.html、プロモーションに行くついでになんか祭りが見れないかと思っていたところ、「歩射神事」という祭りが熱田神宮で行われている。これはもう行くしかない。

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大磯の左義長まつり はぎわら


大磯の左義長まつり 国指定重要無形民俗文化財 Japanese fire festival in winter - YouTube

大磯の左義長まつり
2015年1月11日
萩原雄太

 大磯といえば、「ドキッ! 女だらけの水泳大会」(フジテレビ)の舞台となる「大磯ロングビーチ」がある土地として昭和生まれの記憶に刻まれた地名である。しかし、大磯駅に降り立つと、その華やかなりしイメージとは裏腹に、駅前にはスリーエフしかない田舎町であるということに気づくだろう。そして、田舎であるということはつまり、祭りがあるということだ。

 1月11日、国の無形民俗文化財に指定されている「左義長まつり」が開催され、寒風吹きすさぶ大磯北浜海水浴場に赴いた。

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レポート用原稿【種子取祭の感想】 萩原

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※民俗芸能調査クラブでは、年度末に冊子を制作します。

下記は、この冊子に掲載するための原稿です。

なお、この冊子は4月中旬頃からSTスポットおよび各所で配布されます。

 

 「種子取祭」を見て、ひとつの言葉を提示するなら、それは「矛盾」という言葉だ。

 360人の人口に対して、年間40万人が訪れる竹富島は、観光産業に依存している。しかし、同時に神の存在が息づく島であり、数々の御嶽が残され、僕が話を聞いた島民の大部分は神の存在を信じていた。観光というここ数十年で新たに興った産業を忘れ、「神」に対して向き合う祭りが種子取祭である。

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種子取祭 動画 はぎわら


トゥルッキ - YouTube

 


種子取祭(奉納芸能1日目〜ユークイ) 国指定無形民俗文化財 - YouTube

 


種子取祭(奉納芸能2日目) 国指定無形民俗文化財 - YouTube